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  7. 建設業の残業規制は2024年から。新旧ルール比較とQ&A

Column建設業の残業規制は2024年から。
新旧ルール比較とQ&A

2021.10.21

1.建設業 残業規制TOP.jpg
建設業の残業規制は2024年4月から本格スタート。どのような内容なのか、これまでとどう違うのか、罰則はあるのか。これらについては早めに知っておきたいところです。

この記事では、残業規制が盛り込まれた改正労働基準法を取り上げ、新旧ルールの違いについて解説。長時間労働を余儀なくされている建設業の現状もご紹介した上で、新ルール適用に向けて政府が推進する「働き方改革」についてもあわせて解説します。

目次

  • 建設業の残業に関わる現行ルール
  • 建設業の残業規制は改正ルールでどう変わる?
  • 建設業界における労働時間の現状
  • 建設業の残業規制についてのQ&A
  • まとめ

1.建設業の残業における現行ルール

2.現行ルール.jpg
最初に、これまでの建設業の残業に係る「現行ルール」についてお伝えしておきます。
まず、大原則としての労働時間の基本ルールがこちら。


【労働時間の大原則】
・法律で定められた労働時間の限度…「法定労働時間
1 日 8 時間・1 週間で 40 時間

・法律で定められた休日…「法定休日
毎週少なくとも 1 回

1日8時間・1週間で40時間を超える「時間外労働」や「休日労働」をさせる場合には、「36(サブロク)協定」を労使間で締結し、労働基準監督署へ届出をしなければなりません。


以上の大原則は今回の法改正後も変わりませんので、押さえておきましょう。
36協定で定める時間外労働の上限ルールがこちら。


【36協定で定める時間外労働の上限】
・原則として、時間外労働は月45時間以内かつ年360時間以内
・臨時的で特別な事情がある場合、延長に上限なし(年6回まで)
⇒特別条項付き36協定

建設業は適用除外(上限なし)

建設業には36協定は「適用除外」、つまり、これまで建設業では残業に上限が設けられていなかったことになります。


このように、これまで建設業では他業種と同じように36協定の届出義務はあったものの、届出さえすれば残業は無制限にできてしまうという状況でした。今回の法改正では、建設業にも時間外労働の上限が法律で明確に規定されることとなります。

2.建設業の残業規制は改正ルールでどう変わる?

3.改正ルール.jpg
次に本題の、改正労働基準法にもとづく「新ルール」について解説します。


新旧ルール比較表

=36 協定による時間外労働の限度 新旧ルール比較表=
残業規制ルール改定.jpeg


建設業にも残業の上限規制が適用

新ルールでは、上記のような残業時間の上限規制が建設業にも適用となります
原則としては、時間外労働は月45時間かつ年360時間が上限。臨時的で特別な事情がある場合の「特別条項付き36協定」でも、これまでのルールとは異なり「2〜6ヶ月の平均でいずれも80時間以内」「単月では100時間未満」といった細かな上限規制が設けられます。上の表に記載した全ての要件を満たさなければならないため、細心の注意が必要です。


新ルールは法律で定められた「罰則つき規制」

これまでの旧ルールにある時間外労働の上限は、労働基準法に明記されていたものではありません。旧ルールは厚生労働大臣の告示により定められたものであるため、罰則のような強制力を持つことはありませんでした。

一方で今回の新ルールは、改正労働基準法に具体的な数字の上限が明記されています。
つまり法律で定められた「罰則つき規制」になったというわけです。


建設業は 2024 年 4 月からスタート

今回の改正労働基準法は、既に2019年4月より順次施行されています(中小企業は 2020年4月より)。ところが建設業については、新ルールの適用までに5年の猶予期間が設けられています。

つまり建設業で残業の上限規制がスタートするのは2024年4月からです。
※ただし災害からの復旧・復興に関しては、残業の上限規制は当面は適用されません

建設業に5年間の猶予期間が設けられているのは、建設業界においてすぐに新ルールを適用するのはハードルが高い(長時間労働や休日をとりにくい状態が恒常化している)からです。それでも政府が今回、残業時間の上限規制を適用除外とせず、建設業においても適用することに踏み切ったのは、「将来の担い手」を確保したいという狙いがあるためです。「建設業の労働環境が改善されれば、建設業を希望する人が増えたり、離職率を下げることに繋がるはず」と考えたわけです。

次項では、現状の建設業の労働環境について、データを参照しながら解説しています。

3.建設業界における労働時間の現状

建設業界における労働時間は実態として、長時間労働が常態化しており、かねてより問題視されています。一般社団法人 日本建設業連合会がホームページで発表している「長時間労働」のグラフによれば、建設業の労働時間は全産業の平均と比べて、年間約320時間も上回る状況です。


4.長時間労働.jpg(引用:一般社団法人 日本建設業連合会「建設業のいま」


この傾向は長年続いており、特に最近はその差が開いてきていることが分かります。他産業ではワークライフバランスを意識した働き方が増えていることも一因として考えられるでしょう。


建設業は休日も十分取れていない

長時間労働を余儀なくされているということに加え、休日も少ないという側面もあります。国土交通省の資料「建設業における働き方改革」によれば、建設業での休日のスタンダードは4週4休つまり「週休1日」。


5.休日の状況.jpg(引用:国土交通省「建設業における働き方改革」


上グラフでおよそ半数を占めている青色部分が「4週4休」。オレンジ色の「4週4休未満」と合わせると、約65%が「週休1日又はそれ以下」で働いていることが分かります。
公的にまとめたデータでこの状況ですから、実際はもっと少ないことが想像できます。

実態として、「休みは日曜日だけ」という企業様は多いです。多くの企業や職人が複合体となって進めていく建設現場においては「自分のところだけ休日」というわけにはいかない、悩ましい事情も一因と考えられます。


新ルール適用までに変革することが急務

このように、長時間労働が常態化している現状を踏まえると、残業規制の新ルールは建設業界にとってハードルが高いことは明らか。新ルールでの働き方を実現するには様々な障壁があるでしょう。

だからこそ政府も建設業に対しては5年の猶予期間を設けています。この期間に政府と民間が協力し合って変革していき、これまでの慣行を破っていく必要があるのです。

4.建設業の残業規制についてのQ&A

7.Q_A.jpg
今後、企業側が労働時間の削減に取り組むにあたり色々な疑問が生じてくると思われます。ここでは何点かの「素朴な疑問」にお答えしていきます。


現場への直行直帰は労働時間に含まれる?

残業時間を計算するには、まず労働時間を正確に把握しなければなりません。そのためには、始業時刻・終業時刻を正確に記録していくことが前提となります。

労働時間の考え方について、どこからどこまでが労働時間なのかを判別するためには「使用者の指揮命令下にあるかどうか」が1つの基準となります。ここでは建設業でよくある直行直帰を例にとってみましょう。


【労働時間に該当しないケース】
●一人あるいは複数人で車に乗り合わせて現場に向かう
単に現場に向かうという意味合いならば「通勤時間」と捉えられるため労働時間にはカウントしません。←これがスタンダードな考え方です。

●任意で事務所で待ち合わせして現場に向かう
任意で事務所を経由するだけなら労働時間にカウントしません。


【労働時間に該当するケース】
●会社からの指示のもと事務所で待ち合わせして現場に向かう
会社として「事務所に7時集合」と命令した場合や、事務所で準備やミーティングなどが行われた場合はそれを業務開始とみなされ、その時点から労働時間となります。

●移動中の車内で当日の段取りなどの打ち合わせが行われる
移動中の車内において、親方・リーダーや工事監督との打ち合わせが行われる場合には、「指揮命令下」にあるとされ、労働時間に含まれる可能性が高いです。


このように、直行直帰を労働時間に参入するかどうかはケースバイケース。労使トラブルを避けるためには、移動時間はあくまで現場に向かう(現場から帰る)ためのものとシンプルに捉えることがポイントと言えそうです。

また、現場によっては通常の現場圏内を離れ、遠い現場になることもあるでしょう。このような場合は時間的・体力的な負担が重くなるため、時間や距離に応じた手当てで配慮するのも1つの方法です。


規制を守れなかったら罰則はどうなる?

2024年4月スタートの残業規制を守れなかった場合は、労働基準法違反となり罰則があります。罰則の内容は

6 ヶ月以下の懲役又は 30 万円以下の罰金

とされています。
ただし過去の制度改正などの際の対応を考えると、今回も真っ先に中小企業からメスが入るということは考えにくいです。あくまでも推定ですが、まずは影響力の大きい大手企業から徐々に介入されていくのではないでしょうか。

とはいえ、どの企業においても規制を無視し続けるのは問題ですので、業界全体で足並みを揃えてルールを守るよう取り組んでいかなければなりません。


「週休 2 日」は義務なのか

「週休2日」そのものは義務にはなっていません。あくまで国や業界団体が「週休2日」を目指している、という恰好です。


労働時間の大原則として、「法定休日」は毎週少なくとも1回、と定められています。つまり休日は週1日が義務ということになります。建設業の場合は、日曜日を法定休日に設定されることがほとんどでしょう。

しかし、ここで問題になるのは「法定労働時間」が1日8時間・1週間で40時間以内と定められている点です。これを超える部分は「時間外労働」となります。もし「土曜日も出勤できるようにしたい」ということなら、【1週間で40時間の範囲内】で時間を配分していくことになります。

今回の法改正ではこのように「時間外労働」に上限規制がかかったため、毎週土曜日に時間外労働するのが困難になったことは確かです。

※毎週 土曜日に労働するケース
月〜金曜日は休憩を交えて 1 日あたり7時間労働として合計35時間。残りの5時間を土曜日の午前出勤に充てる、といった方法が可能。それを超えた部分は時間外労働でカウントします。

※隔週 土曜日に労働するケース
「変形労働時間制」を採用することで、1週間40時間の計算を週単位で行うのではなく、もっと長い期間で平均して計算することができます。祝日やお盆休み・お正月休みなどを加味して計算することができるため、隔週土曜出勤などが可能となるでしょう。


中小企業の立場として準備しておくことは?

今回の法改正によって、時間外労働の上限規制が罰則つきで適用されることになります。
そのためこれまで以上に就業環境を整えていくことが望まれます。

建設業には猶予期間があるため、2024年4月までにそれぞれの企業様において問題となりそうなところをピックアップし、1つずつ解決していきましょう。例えば、


●そもそも始業時刻・終業時刻を把握できていない
⇒時刻を記録するシステムを検討する

●労働時間や休日の決まりができていない
⇒就業規則の整備を進める


これらを忙しい日常業務のかたわらで進めるのは難しいこともあるため、社会保険労務士に相談するのも1つの方法です。

2つ目に、基本的な就業環境を既に整備している企業様なら、業務効率アップ・生産性向上に取り組まれてはいかがでしょうか。前述でご紹介した3次元モデルのような技術でなくとも、身近なスマホやタブレットを使ったデータ管理など、まだ改善の余地があるかもしれません。

3つ目に、人材派遣サービスの利用を検討しておくことをおすすめします。人材派遣サービスのメリットは、必要な時に必要なだけ人材を配置できること。私たちライズの人材派遣は建設業に特化しているため、必要な時に必要な人材をご紹介することができます。


=ライズの人材派遣サービス 3 つの強み=
・若手人材が豊富
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残業規制の適用によって、一人当たりが担う業務量は減ることが予想されます。そのため業務の効率化に取り組むことはもちろんですが、人員配置を見直していく必要性も出てくるかもしれません。そうした場合に備え、人材派遣の特徴や活用方法について情報収集しておくと安心です。

ライズの建設業界向け人材派遣はこちら

5.まとめ

13.まとめ.jpg

今回は 2024年4月からスタートする建設業の残業規制について、解説してきました。
改めて残業規制の要点をまとめます。


・これまで建設業では残業に上限が設けられていなかった
・時間外労働の新ルールは原則「月45時間以内かつ年360時間以内」
・特別条項付きにする場合にも上限規制あり
新ルールは罰則つきである
・建設業は 2024年4月からスタート


そして、新ルール適用に向けて政府が推進する「働き方改革」についても解説してきました。若い世代にとって、週休2日はもはや当たり前。将来の担い手を確保するためにも、建設業はまさに変革の時に来ています。

私たちライズは、建設業に特化した人材派遣サービスを提供しています。20代から30代の若い派遣スタッフを中心に、企業様のニーズにマッチした人材をご紹介。「若手に手伝ってもらいたい」「施工管理を補充したい」そんな時は是非ライズをご検討頂ければ幸いです。

⇒参考資料
厚生労働省「時間外労働の上限規制わかりやすい解説」
参議院「建設業における働き方改革の概要」
国土交通省「建設業における働き方改革について」
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