2024年10月21日(月)配信
皆さん、「クラウディングアウト」って知ってますか?
和訳は「押し出す、押し退ける」といった意味のようですが、
これ、今年(2024年)6月、財務省の財政制度分科会というところが
建設業界について議論した中で出てきた言葉です。
分科会の資料には、
「建設業就業者数の減少傾向が続く中、公共事業の予算規模の増加や
公共工事設計労務単価の引上げといった諸施策の結果として、
民間工事の円滑な施工に支障を及ぼすといったクラウディングアウトを
引き起こすことのないよう留意が必要。」
とあります。
建設業で働く人が減っているのに公共工事を増やしたり、
公共工事の労務単価をアップしたら民間工事に悪い影響が出るぞ、って話です。
公共工事を増やしたり、その労務単価をアップしたら何故民間工事に悪影響なんでしょう。
理屈はこうです。
公共工事が増えて、その労務単価もアップするってことは、工事会社や技能者(職人)からすれば、
コスト競争が厳しく仕事量も安定しない民間建築工事よりも、
高単価で且つの多くの仕事量がある公共土木工事の方が魅力的に映ります。
仕事も多くて高単価なら、会社として職人の給与など待遇も良くできるし、
民間工事の課題である週休2日をする事も可能になるでしょう。会社の利益率も上がるはずです。
すべての工事会社が対象になる訳ではないでしょうが、
例えば、とび・型枠・鉄筋といった業種なら土木でも建築でもある程度共通制があるので、
建築工事主体から土木工事主体に変えるといった会社も出てくるはずです。
実際、当社でお付き合いのある工事会社も、近年は民間建築から公共土木へシフトする会社が増えています。
で、クラウディングアウトです。
公共土木工事が増えて更に高単価なら、そちらにシフトする会社が増えて
民間建築工事をやる会社が少なくなってしまい、それでは民間建築工事が滞ってしまうのではないか。
要するに、公共土木が民間建築を押し出したり、押し退ける状況になるのではないかって事です。
土木による建築のクラウディングアウトですね。
ではなぜ、財務省はクラウディングアウトを言い出したのか何が目的なのか(何となく分かると思いますが)
国交省や建設業界はそれにどう反論しているのか、次回号で書いてみたいと思います。