2023年7月14日(金)配信
国土交通省が先月6月29日に開いた委員会(※1)の資料の中に、
技能者(職人)の賃金引き上げについて記載がありました。
※1 中央建設業審議会・社会資本整備審議会産業分科会建設部会
令和5年審議/第2回基本問題小委員会
なかなか上がらない職人の賃金をどうやって引き上げていくのか、
具体的な施策をどうすべきか、といった内容が書かれています。
公共工事は、いわゆる「設計労務単価」の上昇により落札額が上がるため
職人へ払う賃金も上昇傾向にあると言われていますが、
民間工事は総価契約が主流になっていて、思うように賃金が上がっていない
のが現実です。
ただ公共工事にしろ民間工事にしろ、
職人に実際に賃金を払うのは殆どの場合、下請である専門工事会社なので
ここが賃金を上げてくれない事には、どうにもなりません。
そこで国交省が考えた施策が
相応の職人単価(標準労務費※2)を踏まえた請負額で元請が下請と契約した場合は、
契約書などに以下の項目を入れるというものです。
(1)請負額が相応な訳だから職人へも相応の賃金を払うことを下請が元請に約束する。
(2)更に実際にその賃金が職人へ払われた事を確認するため賃金台帳を下請が元請に開示する。
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この部分の国交省の記載がこちら(標準労務費を元にした賃金行き渡りの考え方)
https://www.rise-jms.jp/media/construction/a1082※2 標準労務費とは、国交省が工事積算する際に職人単価として使用する「設計労務単価」を
元に決められた金額のこと。
ま、これ要するに、職人離れや人手不足の背景からくる話ですね。
元請が職人の賃金を上げようと下請に対していくら請負額をアップしたところで、肝心の下請が
職人の賃金アップをしないんじゃ意味ないから、契約書で約束させよう、って事でしょう。
職人の低賃金問題は、業界の将来を左右する重要な問題だと思いますが、
下請が雇う職人の給与まで行政が口出しするというのは、どうなんでしょう。
建設業って最近はもう社会主義みたいになってきましたね。笑
こういった施策は必ず国交省の直轄工事から始めると思いますが、
公共工事だったら、この手法は通じるでしょうね。
発注する役所が、受注した元請にこのルールを実質的に強制すればいい訳ですから。
ただ問題は民間の建築工事でしょう。
公共工事と違って市場原理で動いている訳で簡単にはいきません。
それでも、まあとにかく先ず公共工事から始めるって事は大事なんだと思いますが、
根本的な職人の待遇改善の決定打にはならない気がします。