排出量取引制度とは?
2050年のカーボンニュートラル実現に向けた取り組みの一つで、企業ごとにCO2排出量の枠(キャップ)を設け、枠の過不足を企業間で取引できる制度のこと。
この方式は、キャップ・アンド・トレード方式と呼ばれ、日本では2026年に本格稼働する予定である。
■排出量取引制度における排出枠の割当方法
割当方法には、無償割当と有償割当がある。
【無償割当】
・グランドファザリング方式:
過去の実績に応じて排出枠を設定する方式である。
過去の削減努力が反映されにくいため、公平性に欠ける側面がある。
・ベンチマーク方式:
対象となる製品・業種における排出量の基準(ベンチマーク)を設定し、ベンチマークに生産量を乗じて排出枠を設定する。
ベンチマークを全ての業種に設定することに労力を要するが、過去の削減努力が反映されやすい。
【有償割当】
・オークション:
オークションによって排出枠を配分する方法である。
企業が排出量に応じたコストを負担するため、購入する排出枠が少なくなるほどコストが抑えられ、排出量削減の努力が促される。
■排出量取引制度のメリット
・排出削減量の目標が明確になる
・自社にとって低コストで削減する方法(自社努力で削減する または 他社から排出枠を購入する)を選択できるため、温室効果ガスの削減に必要な費用を抑えられる。
・CO2排出量に価格を設定することで、排出者の行動変容が期待できる。
■デメリット
・排出量の多い企業が規制の緩い国に移転する可能性がある(カーボンリーケージの問題)
・排出枠の設定が難しい
・排出枠の購入が可能になると、CO2削減のための技術の発展や新規導入の阻害因子となる可能性がある。
■排出量取引制度を導入している自治体
・東京都:排出量取引制度(キャップ・アンド・トレード方式)
日本で初めて導入された大規模な排出量取引制度で、東京都内の大規模事業所を対象に、排出量の上限を設定し、排出枠の取引を可能にしている。
・埼玉県:目標設定型排出量取引制度
埼玉県内の大規模事業所を対象に、過去の排出量の平均に目標削減率を乗じた量を排出削減目標として設定し、排出枠を設定している。