2023年5月12日(金)配信
国土交通省が今年3月、
建設業を持続可能な環境にするための検討会で「まとめ」を公表しましたが、
その中に「著しい工期」について目を引く記載があったので、
今日はその話を。
2020年10月に施行された改正建設業法では、
工事会社が著しく短い工期で請負契約するを事を禁止し、
違反した場合はペナルティを課すとしています。
条文はこうです。(建設業法、第19条の5)
「注文者は、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる
期間に比して、著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはならない」
対象者は元請や下請などの工事会社はもちろんですが、
発注者である役所やデベロッパーにも及んでいます。
工期が適切なのかどうか、著しく短い工期なのかどうかは、
許可元である国交大臣や都道府県知事などが判断するようですが、
では一体、それはどうやって判断するのでしょうか?
主だった判断項目(考慮しないといけない項目)は以下の通りです。
・自然要因(降雨日・降雪日、寒冷地における冬季休止期間等)
・休日や法定外労働時間(週休2日の確保等)
・イベント(年末年始、夏季休暇、GW、騒音規制等)
・施工制約(鉄道近接、航空制限、搬出入時間の制限等)
・関係者調整(工事の説明会等)
・安全衛生(安全を確保するための工期設定等)
・工期変更(設計変更等)
上記にもありますが、
今回の検討会資料で目に付いたのが「残業規制」についての一文です。
▶国土交通省、残業規制に違反した場合は「著しく短い工期」
https://www.rise-jms.jp/media/working_constructionindustry/a1067これ、極論すれば
「36協定に違反する残業時間で工事をした場合、建設業法違反になる」
ってことです。
著しく短い工期かどうかの判断項目の一つである
「休日や法定外労働時間(週休2日の確保等)」は、
残業規制に違反したかどうかを基準にするって事でしょう。
来年からの残業規制は、
「法律上の残業上限時間数」と「36協定上の残業上限時間数」は
ルール上、会社によって違っても構いませんが、
労働集約型産業である建設業の場合、ほとんどの会社が
▶法律上の残業上限=36協定の残業上限
に設定するはずなので、
▶36協定違反=著しく短い工期である=建設業法違反
という流れになると思います。
これまでの建設業は工期を優先するあまり
現場で働く労働者に長時間労働を強いてきました。
ただ今後については、
突貫工事、夜間工事でどうにか工期までに工事を完成させても、
36を超えるような長時間残業をしたのであればペナルティを喰らう、
という時代になりそうです。