株式会社ライズ
目次
発注者支援業務は、基本的に資格がなければできない仕事です。
そこで本記事では、
「発注者支援業務をするのに必要な資格って何?」
「土木施工管理技士は知ってるけど、それ以外にも該当する資格ってあるの?」
といった疑問をお持ちの方に向けて、発注者支援業務に必要な資格を解説します!
発注者支援業務で土木以外の仕事をする場合の資格についても説明していますので、発注者支援業務に興味のある方は最後まで読んでみてください!
発注者支援業務で圧倒的なボリュームを占めるのが土木の仕事です。
国土交通省の資料によると、土木に必要な資格は次の通りです。
それでは順に解説します。
技術士は施工管理技士のレベルから考えるとかなり難しい資格で、イメージとしては、建設コンサルタントで設計を行うような人が目指すものです。
技術士補は技術士より1つランク下という意味で、内容的に少しは簡単になりますが、やはり難関の域に違いはありません。
また技術士・技術士補の領域は科学技術全般にわたり、それぞれ21の技術部門に分けられています。
その中で発注者支援業務の土木の仕事に必要とされるのが”総合技術監理建設部門(建設部門)”の資格です。
技術士は産業に必要な技術者を育成することを目的として、昭和33年に作られた資格制度です。
科学技術の応用面に携わる技術者にとって最高位の国家資格であり、合格すると、技術の高等応用能力や高い技術者倫理、豊富な実務経験を備えていると認定されたことになります。
技術士の大半は、国や地方自治体、企業などで業務を遂行していますが、自営のコンサルタントとして、次のような分野においても活躍しています。
また、技術系資格は専門分野ごとに分かれているのが通常ですが、技術士は科学技術の全領域をカバーしているのが特徴です。
部門は次の21通りに分かれています。
発注者支援業務を目指す上で必須となってくるのが、土木施工管理技士の資格です。
今回紹介する土木系資格の中で最もポピュラーで、取りやすい資格とも言えます。
土木施工管理技士とは、施工技師管理士国家資格の1つです。
工事現場における主任技術者や監理技術者になるためにも必須の資格で、1級・2級ともにそれぞれ第1次検定・第2次検定と2度の試験が行われます。
第1次検定合格時は”〇級施工管理技士補”になり、第2次検定に合格すると”〇級施工管理技士”となります。
各級の試験内容は次の通りです。
【2級】
2級は一般建設業の土木工事で”主任技術者”として施工計画を作成し、工程管理・安全管理など、施工に必要な技術上の管理などを行います。
試験では”土木”・”鋼構造物塗装”・”薬液注入”の3つの種別から選択します。
(1) 土木
試験区分 |
試験科目 |
内容 |
第1次検定(マークシート式) |
土木工学等 |
土木一式工事の施工に必要な土木・電気・機械工学および建築学に関する知識、設計図書を正確に読むための知識 |
施工管理法 |
土木工事の施工計画の作成方法及び工程・品質・安全管理など、管理方法に関する知識・能力 |
|
法規 |
建設工事の施工に必要な知識 |
|
第2次検定(記述式) |
施工管理法 |
土質試験や土木材料の強度等の試験を正確に行うことができるか。試験結果に基づき、工事の目的物に必要な強度を得るための措置を行うことができるか。設計図書に基づいて工事現場の施工計画を適切に作成・実施できるか。高度の応用能力・知識を測る |
(2) 鋼構造物塗装
試験区分 |
試験科目 |
内容 |
第1次検定(マークシート式) |
土木工学等 |
土木一式工事の施工に必要な土木・電気・機械工学および建築学に関する知識、設計図書を正確に読むための知識 |
鋼構造物塗装施工管理法 |
土木工事のうち、鋼構造物塗装にかかる工事の施工計画の作成方法及び工程・品質・安全管理など、管理方法に関する知識・能力 |
|
法規 |
建設工事の施工に必要な法令に関する知識 |
|
第2次検定(記述式) |
鋼構造物塗装施工管理法 |
鋼構造物塗装にかかる土木材料の特性を正確に把握することができるか。鋼構造物の防錆など、工事の目的に必要な措置を行うことができるか。設計図書に基づいて土木一式工事のうち、鋼構造物塗装にかかる工事の施工計画を適切に作成・実施できるか。高度の応用能力・知識を測る |
(3) 薬液注入
試験区分 |
試験科目 |
内容 |
第1次検定(マークシート式) |
土木工学等 |
土木一式工事の施工に必要な土木・電気・機械工学および建築学に関する知識、設計図書を正確に読むための知識 |
薬液注入施工管理法 |
土木工事のうち、薬液注入にかかる工事の施工計画の作成方法及び工程・品質・安全管理など、管理方法に関する知識・能力 |
|
法規 |
建設工事の施工に必要な法令に関する知識 |
|
第2次検定(記述式) |
薬液注入施工管理法 |
薬液注入にかかる土木材料の特性を正確に把握することができるか。地盤の強化など、工事の目的に必要な措置を行うことができるか。設計図書に基づいて土木一式工事のうち、薬液注入にかかる工事の施工計画を適切に作成。実施できるか。高度の応用能力・知識を測る |
【1級】
1級は特定建設業の土木工事において”主任技術者”または”監理技術者”として施工計画を作成し、現場における工程管理・安全管理など工事施工に必要な技術上の管理などを行います。
試験区分 |
試験科目 |
内容 |
第1次検定(マークシート式) |
土木工学等 |
土木工事の施工に必要な土木・電気・機械工学及び建築学に関する一般的な知識・設計図書に関する一般的な知識 |
施工管理法 |
土木一式工事の施工計画の作成方法及び工程・品質・安全管理など、工事の施工の管理方法に関する一般的な知識 |
|
法規 |
建設工事の施工に必要な法令に関する知識 |
|
第2次検定(記述式) |
施工管理法 |
土質試験や土木材料の強度等の試験を正確に行うことができるか。試験結果に基づき、工事の目的物に必要な強度を得るための措置を行うことができるか。設計図書に基づいて工事現場の施工計画を適切に作成・実施できるか。高度の応用能力・知識を測る。 |
あまり有名どころではありませんが、”土木学会”という団体が独自に行っている資格もあります。
それが土木技術者の特別上級・上級・1級・2級です。
内容は土木施工管理技士と似ており、たとえば土木学会の2級土木技術者なら土木施工管理技士2級とリンクしているような感じです。
ただ私の主観では、土木学会の方が少し難しいように感じます。
こちらも発注者支援業務の資格として該当しますが、実際に取得する人はあまりいません。
なかなかここに行く人はいないというのが現状です。
資格の形態は技術士と似ており、試験内容が22の専門技術部門に分かれています。
そのうち発注者支援業務の土木に必要な部門は、建設系の部門です。
RCCM資格制度は、平成3年度、良質な社会資本を整備するための建設コンサルタント業務に係る管理技術者や責任技術者の育成と技術力を客観的かつ的確に評価することを目的に創設されました。
RCCMの専門技術部門は次の22に分けられています。
技術士資格がすでにあるのに、なぜよく似たRCCM資格が作られたのか疑問に思った人もいるのではないでしょうか?
2. 土木以外の発注者支援業務に必要な資格RCCM資格の成り立ちについては、最後の『■RCCM(シビルコンサルティングマネージャー)資格の成り立ちについて』をご覧ください。
以上が土木系の発注者支援業務を請け負う際に必要となる資格です。
最も代表的な施工管理技士以外にも、このような資格があるということですね。
民間の工事現場の施工管理をする場合、土木施工管理技士(1級/2級)はともかく、その他の資格を取得する意味はあまりないと思います。
少なくとも「この資格を取るとすごく役に立つ!」ということはないでしょう。
ただし建設コンサルティングの業務をしたい場合には、いずれかを取得しておいてもいいかもしれません。
そういう意味では、発注者支援業務もコンサルティング業務と言えます。
以前、別記事で書いた通り、発注者支援業務の仕事には土木以外の分野もあります。
その分野を大きく分けると次の5つです。
ここからは、土木以外の発注者支援業務を行う際に必要となる資格を順に説明します。
1つ目は電気です。
国土交通省の資料によると「電気通信設備工事が相当程度含まれると判断される」工事の場合は、土木以外の資格が必要とされています。
該当する資格は次の通りです。
1つ目の技術士は土木のパートでも取り上げましたが、今回は通信・電気系の工事に関わる仕事ですから電気電子部門の取得が必要とされます。
2つ目の電気工事施工管理技士と3つ目の電気通信工事施工管理技士は、どちらも”施工管理技士”の電気工事バージョンと言える資格です。
4つ目の電気工事士と5つ目の電気主任技術者は、いずれも電気技術者試験センター、通称”電験”により実施されている資格です。
電気に関わる発注者支援業務を行う際は上記のような資格が必要となります。
また、電気通信設備工事の資格要件には「第1級陸上特殊無線技士の操作範囲の資格を有する者」というものもあります。
主に陸上における無線局の無線設備の技術的操作を行うための国家資格です。
級によって操作範囲が異なりますが、第1級では放送局・電気通信業務用等の固定局・無線測位局等すべての無線局の無線設備を対象とします。
このことから、携帯電話の基地局や自治体の防災無線といった公共無線の技術操作も可能です。
2つ目は「機械設備工事が相当程度含まれると判断される」工事の場合です。
国土交通省の例で言うと、”水門のポンプ”などが機械設備工事になります。
要件に該当する資格は次の2つです。
機械設備の工事に関わるので、1つ目の技術士・技術士補では、機械部門を取得する必要があります。
また、施工管理技士においては”建設機械”の1級または2級を取らなくてはなりません。
機械設備に関わる発注者支援業務を行う場合は、上記いずれかの資格が必要です。
3つ目は「土木営繕工事が相当程度含まれると判断される場合」の工事ということで、営繕(建築系)の仕事です。
要件としては次の2つの資格が該当します。
建物を建てて管理する仕事なので、当然、土木施工管理ではなく、建築に関わる資格が求められます。
4つ目は「造園工事が相当程度含まれると判断される場合」です。
国営公園で造園工事などを行う際には、次の資格が必要となります。
また、その他の要件としては「都市公園関係の技術的行政経験を5年以上有する者」というものもあります。
最後は「管工事が相当程度含まれると判断される場合」です。
管工事なので、設備系ということですね。
必要な資格は次の通りです。
発注者支援業務では、土木の仕事が圧倒的にボリュームが多いのですが、それ以外にも次の5つの分野があります。
これらの業務を行う際には、それぞれ必要とされる分野の資格を取得しなくてはいけません。
ただ要件に該当する資格をすべて取る必要はなく、”いずれか”という形になります。
各業務において必要な資格を表にまとめると、次の通りです。
発注者支援業務の分野 |
必要な資格 |
土木 |
・技術士/技術士補(総合技術監理部門ー建設部門) ・土木施工管理士(1級/2級) ・土木学会 土木技術者(特別上級/上級/1級/2級) ・土木学会上級土木技術者 ・土木学会1級土木技術者それから土木学会2級土木技術者 ・一般社団法人 全日本建設技術協会 公共工事品質確保技術者(1級/2級) ・RCCM(シビルコンサルティングマネージャー) |
電気 |
・技術士/技術士補(総合技術監理部門─電気電子部門) ・電気工事施工管理技士(1級/2級) ・電気通信工事施工管理技士(1級/2級) ・電気工事士(第一種/第二種) ・電気主任技術者(第一種/第二種/第三種 ・電気通信主任技術者(伝送交換主任技術者または線路主任技術者) |
機械 |
・技術士/技術士補(総合技術監理部門─機械部門) ・建設機械施工管理技士(1級/2級) |
営繕 |
・建築士(1級/2級) ・建築施工管理技士(1級/2級) |
造園 |
・造園施工管理技士(1級/2級) |
管 |
・管工事施工管理技士(1級/2級) |
発注者支援業務の全分野に共通している唯一の資格が”施工管理技士”です。
施工管理技士は主任技術者や監理技術者になるために必須の資格で、施工管理の対象物によって次の7種類に分かれています。
分類 |
資格名 |
土木 |
土木施工管理技士 |
電気 |
電気工事施工管理技士 |
電気通信工事施工管理技士 |
|
機械 |
建設機械施工管理技士 |
建築(営繕) |
建築施工管理技士 |
造園 |
造園施工管理技士 |
管 |
管工事施工管理技士 |
電気に関わる資格が2つありますが、電気通信工事施工管理技士は令和元年に新設された最も新しい資格です。
発注者支援業務には土木以外の分野もあると解説しました。
よって、建築の業務経験者が発注者支援業務を目指すことは可能です。
仕事のボリュームとしては土木が圧倒的ですが、他分野の仕事も少ないながらあるからです。
土木の仕事とその他の仕事の割合は、一般的に8:2くらいと言われています。
本文で少し触れましたが、RCCMは技術士によく似た形態の資格です。
なぜ、技術士という資格制度が既にあるのに、似たようなRCCMという資格ができたのでしょうか?
聞いたところでは、”技術士の認定団体が文部科学省であり、国土交通省ではない”ことから端を発しているそうです。
つまり、建設コンサルタントの会社自体は国土交通省の所轄でありながら、実際に業務を行う上では技術士の資格が必要とされ、その資格の所轄は文部科学省であるという、ちぐはぐな事態があったのです。
国土交通省としては「自分の管轄区域なのに、他の省庁が管理する資格が必須なんて面白くないな」といったところでしょう。
それで、国土交通省が管轄するRCCMの資格が新たに作られたと言われています。
真偽のほどはわかりませんが、まさに”縦割り行政”という言葉がピッタリなエピソードではありますよね。
この記事の内容は以下の動画で解説しています。
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